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西成の特区民泊は2,435件、大阪市全体の27%が1つの区に集まっています。「67%が中国系」は市の統計ではありません

🗨️「西成に民泊が急増していると聞きました。「67%が中国系」という数字は、大阪市が発表したものですか。」

いいえ。67%は阪南大学の松村嘉久教授の調査としてTBS「報道特集」が伝えた数字で、大阪市の公式統計ではありません。一方、施設数のほうは市の公式一覧で確認できます。2026年5月31日時点で大阪市の特区民泊は8,887件、うち西成区が2,435件(27.4%)で24区中最多です。

[不動産] この記事の要点

何が起きたか

TBS NEWS DIG「報道特集」は2026年、大阪市西成区の特区民泊が2,435施設あり、その67%を中国出身者または中国系法人が運営しているとする阪南大学・松村嘉久教授の調査(2026年5月末時点)を報じた。大阪市は2025年10月27日に特区民泊の新規受付停止の方針を決め、同年11月28日に国家戦略特区の区域計画変更の認定を受けたうえで、2026年5月29日をもって新規申請および居室追加等の変更申請の受付を終了した。すでに認定を受けた施設は従来どおり営業できる。

発表日・更新日

2026年8月16日 発表

影響を受ける人
  • 大阪市内で住宅を買う・借りる・貸すことを考えている人
  • 実家や空き家を持っていて、宿泊施設への転用を勧められたことがある人
  • 分譲マンションの管理組合の役員をしている人
目次

この記事でわかること

  • 特区民泊と住宅宿泊事業法の民泊はまったく別の制度。最大の違いは「年180日」の営業日数制限があるかないか
  • 大阪市の特区民泊8,887件のうち2,435件(27.4%)が西成区。ただし2位の中央区は市内で最も地価が高い区で、「安いから集まった」だけでは説明がつかない
  • 「67%が中国系運営」は大学教授の調査であって大阪市の統計ではない。市の公式データで確認できるのは施設数・所在地・営業者名・対応言語まで

まず、数字がどこから来たのかを分けます

この話には出どころの違う数字が混ざっています。読み進める前に、そこだけ整理させてください。

数字出どころ性格
西成区の特区民泊 2,435件大阪市が公開している施設一覧(令和8年5月31日版)行政の公式データ
そのうち67%が中国出身者・中国系法人の運営阪南大学・松村嘉久教授の調査(2026年5月末時点)をTBS「報道特集」が報道大学の調査であって、市の統計ではありません
苦情723件(2025年度)大阪市への苦情件数を朝日新聞が報道行政の集計を報道が伝えたもの

67%という数字は、大阪市が調べて発表したものではありません。大阪市が公開しているデータには営業者の国籍も出身地も入っていないので、行政の統計としては存在しない数字です。だからといって調査が間違いだという話ではなく、「誰が、どういう方法で調べた数字なのか」を添えずに広まると意味が変わってしまう、ということです。

いっぽう施設の数と場所は、誰でも確認できます。大阪市は特区民泊の全施設をCSVとPDFで公開しています。この記事では、その一覧を実際に集計しました。

大阪市の特区民泊は8,887件。西成区が突出しています

大阪市が公開している令和8年5月31日時点の特区民泊施設一覧を数えると、市内の施設は8,887件でした。区ごとに分けると次のようになります。

順位施設数市内シェア
1西成区2,43527.4%
2中央区1,37815.5%
3浪速区1,35515.2%
4生野区6237.0%
5此花区3964.5%
6東成区3604.1%
21旭区220.2%
22東住吉区220.2%
23平野区170.2%
24鶴見区20.0%

西成区の2,435件は、報道されている数字と一致します。上位3区(西成・中央・浪速)だけで5,168件、市全体の58.2%です。いっぽう最も少ない鶴見区は2件しかありません。同じ大阪市のなかで、区によって1,200倍の差がついています。

そもそも「特区民泊」とは何でしょうか

特区民泊は、正式には「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」といいます。名前が長いので、以下も特区民泊と呼びます。

国家戦略特区という、国が地域を指定して規制をゆるめる制度があります。そのなかで「旅館業の許可がなくても、自治体の認定を受ければ宿泊事業ができる」としたのが特区民泊です。大阪府が2015年12月に区域の認定を受け、大阪市は2016年から申請の受付を始めました。

導入当時の狙いは、増え続ける外国人観光客に対してホテルが足りない、という問題への対応でした。当初は「6泊7日以上の滞在」が条件で、これでは使いにくかったのですが、2016年10月の政令改正で最低滞在日数が2泊3日以上まで下げられ、一気に使いやすい制度になりました。

普通の民泊との最大の違いは「180日」があるかないかです

「民泊」と呼ばれるものには、法律の違う3つの形があります。ここが混同されやすいところです。

項目特区民泊住宅宿泊事業法の民泊(新法民泊)旅館業(簡易宿所など)
根拠国家戦略特別区域法住宅宿泊事業法旅館業法
手続き自治体の認定都道府県等への届出都道府県等の許可
年間営業日数制限なし(365日)年180日以内制限なし
最低宿泊日数2泊3日以上定めなし定めなし
できる区域国家戦略特区のうち条例のある自治体全国全国(用途地域の制限あり)

投資の観点でいちばん効くのは、太字にした行です。新法民泊は年180日までしか営業できないので、単純に言えば1年の半分は収入が止まります。特区民泊にはその制限がありません。同じ物件でも、特区民泊なら年間の稼働可能日数が2倍以上になります。

旅館業の許可を取れば同じく365日営業できますが、フロントや設備の要件が重く、住宅をそのまま使うのは簡単ではありません。「住宅のかたちのまま、365日営業できる」という点が、特区民泊だけが持っていた強みでした。

全国の特区民泊が大阪に集まった理由

特区民泊は大阪だけの制度ではありません。東京都大田区、千葉市、新潟市、北九州市などでも導入されています。それでも数のうえでは大阪市が圧倒しており、2024年末時点で大阪市内の認定は5,587件、全国の9割を超えていました。

理由として確認できるものを挙げます。

ひとつめは区域の広さです。東京都は大田区だけ、という具合に区域が限られた自治体が多いのに対し、大阪は大阪市の全域で使えました。使える面積がそもそも違います。

ふたつめは需要です。大阪はインバウンドの主要な受け入れ先で、2025年には大阪・関西万博もありました。ホテルの供給が追いつかない時期が長く続いています。

みっつめは、大阪市が最低滞在日数を早い段階で2泊3日に引き下げ、制度として使いやすくしたことです。制度が使いやすければ参入は増えます。

西成に集まった理由は「安いから」だけでは説明がつきません

ここからは不動産の話です。西成区は地価が安い、というのはよく言われます。実際どうなのかを、国土交通省の地価公示(2026年)で確かめました。各区の標準地のうち住宅を用途に含む地点を抜き出し、1平方メートルあたりの価格の中央値を出したものです。

住宅系標準地の中央値特区民泊の件数
平野区175,000円/m²17件
西淀川区175,500円/m²48件
生野区176,000円/m²623件
西成区185,000円/m²2,435件
浪速区447,500円/m²1,355件
中央区668,000円/m²1,378件

標準地の数は区によって5〜22地点と少ないので、中央値は目安として見てください。それでも、はっきり分かることがあります。

平野区は西成区より地価が安いのに、特区民泊は17件しかありません。西成区は2,435件で、143倍の開きがあります。逆に中央区は市内でいちばん地価が高い部類なのに、件数は2位です。つまり「安い土地に民泊が建つ」という単純な関係にはなっていません。

中央区と浪速区に共通するのは、難波・道頓堀・日本橋といった繁華街そのものだということです。高くても、そこに泊まりたい人がいる。いっぽう平野区や西淀川区は、安くても観光の目的地から離れています。

ここからは私の見方です。西成区は、この2つの条件が同時に成り立つ数少ない場所だったのだと考えています。地価は市内で下から4番目の水準でありながら、新今宮駅からは南海電鉄で難波まで数分、動物園前駅は地下鉄御堂筋線と堺筋線が使え、通天閣と新世界は歩いて行ける距離にあります。さらに、簡易宿所が集まる歴史があり、小さな建物を宿泊に使うことへの抵抗が地域として小さかった。「安さ」と「観光地への近さ」が両立する区は、大阪市内では西成以外にほとんどありません。

中国語対応を掲げる施設は、市全体で67.8%あります

ここは慎重に書きます。大阪市が公開しているデータには、営業者の国籍も出身地も入っていません。したがって「中国系が何%」を市の公式データから出すことはできません。

公開されているのは「対応する外国語」の欄です。これは営業者が誰かではなく、その施設がどの言語で客を受けられるかを示すものです。集計するとこうなりました。

対応言語大阪市全体(8,887件)西成区(2,435件)
英語7,608件(85.6%)
中国語6,029件(67.8%1,914件(78.6%

市全体の中国語対応率67.8%は、報道された「西成の67%が中国系運営」と数字が近いのですが、この2つはまったく別のものを数えています。片方は施設の言語サービス、もう片方は営業者の出自です。並べて論じてはいけません。念のため書き添えます。

そのうえで言えるのは、中国語で客を受けられる施設が市内の3分の2を超えており、西成区ではさらに10ポイント以上高い、という事実です。これは「なぜその事業者が有利なのか」の説明にはなります。中国からの観光客に対して、予約サイトでのやりとり、到着後の連絡、トラブル対応までを母語でこなせる事業者は、単純に営業上有利です。

もうひとつ、公式データから分かることがあります。西成区の2,435施設を営業者名で集計すると、営業者は1,401者いました。1者あたり平均1.74施設です。1施設しか持っていない営業者が1,051者、全体の75%を占めています。最も多く持つ営業者でも107施設、上位10者を合わせても357施設で全体の14.7%にとどまります。

つまり、少数の大手が街を買い占めたという構図ではありません。小さな事業者が大量に、それぞれ1〜2件ずつ参入した結果が2,435件です。この点は、実態を語るうえで落とせないところだと考えています。

街に起きたプラスの変化

数字が動いた結果、街には両方向の変化が起きています。まず、確認できるプラス面から書きます。

ひとつは建物の再利用です。西成区には古い長屋や小規模な住宅、空き家が多くありました。取り壊すにも費用がかかり、貸しても借り手が付きにくい物件が、改修されて宿泊施設として使われるようになりました。使われない建物は傷みますし、防犯上も防災上も地域の負担になります。改修されて人が出入りする建物に変わったこと自体は、街の資産としてはプラスです。

もうひとつは人の流れです。宿泊者が増えれば、周辺の飲食店やコンビニ、銭湯などに客が来ます。TBS「報道特集」も、賑わいが生まれている面を伝えています。

そして、外部からの投資が入ったこと自体も変化です。長く不動産の価格が動かなかった地域に、改修と取得のためのお金が流れ込みました。

一方で、苦情は2025年度に723件と過去最多になりました

問題の側も、数字で出ています。大阪市に寄せられた特区民泊への苦情は2025年度に723件で、過去最多でした(朝日新聞報道)。これまで最も多かったのは2019年度と2024年度の399件ですから、1年で1.8倍に増えたことになります。

内容として報じられているのは、宿泊者による騒音とごみ出し、そして運営側に連絡がつかない、対応が不適切だったというものです。後者は施設の側の問題で、宿泊者のマナーとは別の話です。

大阪市は2025年11月に「大阪市迷惑民泊根絶チーム」を設置し、指導を強化しました。あわせて、2025年10月31日時点で認定されていた7,312施設すべてを対象に営業実態調査を実施しています(調査期間2025年11月26日〜12月26日)。

その結果が2026年2月16日に公表されました。回答があったのは5,824施設で、回答率79.6%。うち312施設は休止中でした。裏を返すと、1,488施設が市の調査に回答していません。認定を受けて営業している施設のおよそ5件に1件と連絡が取れなかった、ということです。苦情のうち「連絡がつかない」が多いという報道と、この数字はつながって見えます。

住まいの側から見た影響も書いておきます。住宅として使われていた部屋が宿泊施設に変わると、その分だけ賃貸や売買に出る住宅は減ります。分譲マンションでは、管理規約で禁止していない限り同じ建物に宿泊施設が入ることがあり、大阪市は2016年12月と2017年10月に区分所有建物における特区民泊の取り扱いについて通知を出しています。中古マンションを買うときに管理規約の民泊条項を見る、というのは大阪市内ではもう一般的な確認事項です。

大阪市が2026年5月29日で新規受付を終了しました

大阪市は2025年10月27日に特区民泊の新規受付を停止する方針を決め、同年11月28日に国家戦略特区の区域計画変更について認定を受けました。そのうえで、市のページにはこう書かれています。

令和8年5月29日(金曜日)をもって、特区民泊の新規受付を終了します。

——大阪市「大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の新規受付終了について」

終了したのは新規申請だけでなく、居室追加などの変更申請も含まれます。既存の施設を増やす方向の手続きも止まった、ということです。

市は終了の理由をこのページに書いていませんが、直前の経緯を並べれば、苦情の急増と、それに対する指導が追いつかない状況への対応であることは読み取れます。制度が始まった2016年当時の課題は「ホテルが足りない」でしたが、10年経って課題が入れ替わりました。

すでにある8,887施設はこれからどうなるのか

ここが誤解されやすいところです。受付が終わっただけで、既存の施設が閉鎖されるわけではありません。市のページには、5月29日以前に認定を受けた施設は従来どおり営業できると明記されています。5月29日までに申請していて処分が間に合わなかったものも、後から認定されれば既認定の扱いになります。

つまり8,887件はそのまま残り、今後は増えないという状態です。市の対応は「新しく増やさない」から「今あるものを監視・指導する」へ移りました。営業実態調査と迷惑民泊根絶チームは、その方向の施策です。

不動産の観点から見た場合、認定を新規に取れないということは、既存の認定物件の希少性が上がることを意味します。ここからは私の見方ですが、認定付き物件の売買価格には上乗せが起きやすくなるはずです。同時に、指導が強まれば運営コストは上がります。単純に「持っていれば得」とは言えません。

また、報道では新法民泊(年180日制限のあるほう)へ流れる動きも指摘されています。特区民泊の受付が止まっても、届出制の新法民泊は全国どこでもできるためです。180日の上限が実際に守られるかは、これからの監視次第ということになります。

この記事で書かなかったこと

事実と推測を分けるために、確認できなかったので書かなかったことを挙げておきます。

ひとつは、投資や在留資格の制度を使った移住の広がりについてです。関連づけて論じている記事はありますが、大阪市や国の一次資料で裏付けが取れなかったため扱いませんでした。もうひとつは、住民が転居を迫られた件数です。個別の事例は報じられていますが、全体でどれだけ起きているかを示す統計は見つかりませんでした。

数字が出ていないことを「たくさん起きている」とも「ほとんど起きていない」とも書けません。分かっているのは、大阪市の公式一覧に載っている8,887件と、その内訳までです。

この記事の情報は2026年8月16日時点のものです。施設数は令和8年5月31日版の一覧にもとづきます。

生活・仕事にどう効くか

  • 大阪市内で家を買う・借りるとき:分譲マンションでは、管理規約で特区民泊を禁止していないと同じ建物に宿泊施設が入ることがあります。大阪市は2016年12月と2017年10月に、区分所有建物での特区民泊の取り扱いについて通知を出しています。中古で買うときは管理規約の民泊条項を必ず確認してください。
  • 空き家や長屋を持っている人:特区民泊は2026年5月29日で新規受付が終わったため、これから新たに特区民泊として認定を受けることはできません。宿泊施設への転用を勧められた場合、それが年180日制限のある住宅宿泊事業法の民泊なのか、旅館業の許可なのかで、収支の前提がまったく変わります。
  • 近所に民泊ができたとき:大阪市に寄せられた特区民泊への苦情は2025年度に723件で過去最多です(朝日新聞報道)。市は2025年11月に「大阪市迷惑民泊根絶チーム」を設置し、指導を強化しています。苦情窓口は各施設に設置が求められており、連絡がつかない場合は市への相談先があります。

結局どうすればよいか

  • 分譲マンションを買う・借りるときは、管理規約に民泊を禁止する条項があるかを契約前に確認する
  • 空き家の宿泊施設への転用を検討するなら、特区民泊・住宅宿泊事業法・旅館業のどれに当たるかを先に確定させる。特区民泊は新規に取得できない
  • 近隣の民泊で困っている場合は、施設に掲示された苦情窓口と、大阪市の相談窓口の両方を控えておく

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公式出典

更新履歴

  • 2026年8月16日 初版を公開

※本記事は2026年8月16日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。

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この記事を書いた人

ハウスメーカー2社で営業職を経験し、不動産・建築の基礎を習得。
その後、地域密着型の不動産会社にて営業事務として勤務し、
契約書作成、ポータルサイト管理、物件情報の入力・更新など、
実務全般に携わってきました。

特に、ポータルサイトを「より魅力的に見せる工夫」や、
反響につながる「分かりやすい間取り図作成」を得意としています。
自分が関わった物件に反響があった時の喜びが、今の原動力です。

現在は子育てのため一線を退いていますが、
これまでの実務経験を活かし、
フリーランスとして不動産会社様向けの
バックオフィスサポート業務を開始しました。

現場目線を大切にしながら、
「早く・正確に・伝わる」業務サポートを心がけています。

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