「家に都市計画道路の線がかかっているらしい。いつ立ち退きになるの?」。答えは、線がかかっただけでは、立ち退きの時期は決まっていません。動き出す合図は、都市計画法62条の「事業の認可(承認)の告示」です。告示が出るまでは、条件つきで建て替えもできます。
2026年10月4日には、山梨県で国道20号のバイパス「新山梨環状道路」の広瀬〜桜井(2.0km)が着工しました。新山梨環状道路の着工のニュースでは、都市計画決定から着工まで13年あまりかかっています。この区間の年表を使って、線がかかった家に何が起きるのかを順番に見ていきます。
線がかかった家に起きること
都市計画道路には、大きく2つの段階があります。線を引いただけの「計画決定」と、国や県・市が工事をすると決めた「事業認可(承認)」です。家に効くルールは、この2つでまったく違います。
| 計画決定だけ | 事業認可の告示のあと | |
|---|---|---|
| 根拠 | 都市計画法53条・54条 | 都市計画法65条・69条 |
| 建て替え | 知事等の許可が要る。2階以下・地階なし・木造や鉄骨造などで、移転や取り壊しがしやすいものは「許可をしなければならない」 | 工事の障害になるおそれのある建築には許可が要り、知事等は事前に施行者の意見を聞く |
| 立ち退き | 時期は未定 | 用地交渉が始まる。最後は土地収用法が使える(69条) |
| いつまで続くか | 決まっていない | 工事が終わるまで |
計画決定だけの段階で建てられるのは、原則として2階建てまでです。東京都の区市では、2016年4月1日から、階数3・高さ10m以下で地階がなく、木造や鉄骨造などの建物まで緩めています。どこまで緩めているかは自治体で違うので、建て替えの前に必ず役所の都市計画の窓口で確かめます。
読者
線がかかっているなら、もうすぐ出ていかないといけないんでしょ?
それは告示が出てからの話です。線だけの段階は、何十年もそのままのことがあります。まず「計画決定だけなのか、事業中なのか」を確かめるのが先です。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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新山梨環状道路の年表で見る
実際の道路で、線を引いてから工事が始まるまでを並べます。国の事業評価の資料と甲府河川国道事務所の発表からまとめました。
| 時期 | できごと | 沿線の家にとって |
|---|---|---|
| 2013年3月 | 都市計画決定 | 線がかかる。建築は53条の許可制 |
| 2016年度 | 事業化 | 国の予算がつく |
| 2019年3月 | 道路計画の説明会 | 計画の中身が地元に示される |
| 2022年9月5日 | 都市計画事業の承認・認可の告示 | 65条の制限に切り替わる |
| 2022年10月 | 設計・用地説明会、用地幅杭の打設 | どこまで買われるかが杭で分かる |
| 2023年3月末 | 用地取得率 約4% | 交渉が始まったばかり |
| 2026年3月末 | 用地取得率 約54% | 半分ほどが契約済み |
| 2026年10月4日 | 着工(橋梁下部工事) | 残りの用地交渉は続く |
告示から着工までは約4年1か月です。告示が出たあとも、すべての家が同時に立ち退くわけではありません。用地は1軒ずつの交渉で、工事は買えたところから順に始まります。

用地交渉から引き渡しまで
立ち退きの手順は、山梨県の用地課が公開している流れがわかりやすいので、そのまま並べます。国や市の事業でも、大きな順番は同じです。
- 事業計画説明会
- 用地幅杭の打設
- 境界立会確認
- 用地測量及び土地・物件調査
- 面積・数量等の確認
- 補償金額の算定
- 事業説明会・用地説明会(一般的な補償の説明)
- 用地交渉
- 契約
- 建物等の移転・土地の引き渡し
- 補償金の支払い
山梨県では、契約金額が50万円以上なら、契約のあとに7割を前払いし、登記が終わって更地を引き渡したときに残りの3割を払います。引っ越し先の手付金に前払い分を充てられる仕組みです。
立ち退き料と税金で損をしない
サジェストには「都市計画道路 立ち退き 儲かる」という語まで出ます。実際の補償は、土地の代金と、建物の移転や引っ越しにかかる損失の穴埋めが中心です。そのうえで、税金に大きな特例があります。
| 特例 | 中身 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 5,000万円の特別控除 | 公共事業で土地建物を売った利益から最高5,000万円を差し引ける | 最初に買取りの申出があった日から6か月を過ぎて売ると使えない |
| 代替地を提供した人 | 最高1,500万円の特別控除(山梨県の案内) | 代わりの土地を出した人向けで、立ち退く人とは別 |
交渉を長引かせるほど得をする、とは限らないのがこの6か月です。条件に納得できないときは、期限を確かめたうえで、税理士や弁護士に早めに相談します。
自分の家にかかっているかの調べ方
調べ方は自治体ごとに違いますが、確かめる中身は全国で同じ3つです。
| 確かめること | どこで分かるか |
|---|---|
| 計画決定だけか、事業中か | 市区町村の都市計画図・地図サービスの「整備状況」 |
| 計画の幅と線の位置(敷地のどこまでか) | 都市計画の窓口で図面を見る(ネットの地図は目安) |
| 事業認可の告示が出ているか | 窓口で確認。告示が出ていれば用地の担当課を教えてもらえる |
ネットの地図は縮尺が粗く、線が敷地の何メートル内側を通るかまでは読めません。買う前・建てる前なら、窓口で図面を出してもらうのが確実です。用途地域の境目と同じで、用途地域の境界線の調べ方と同じ窓口で一緒に聞けます。
早く買い取ってほしいとき
都市計画法56条には、土地の買取りの申出という仕組みがあります。ただし対象は、知事等が55条で「事業予定地」として指定した区域の土地で、建築が許可されないためにその土地の利用に著しい支障が出る場合です。この場合は、特別の事情がない限り時価で買い取るとされています。指定のない一般の計画線にかかっているだけの土地で使えるかは、窓口で確かめてください。
再開発での立ち退きは仕組みが別です。再開発の立ち退き(東京駅前の例)もあわせて読むと、道路と再開発の違いが分かります。
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