🗨️「自衛隊に原潜を入れることは、決まったの?」
決まっていません。報じられたのは、年内に改定する安保3文書に原子力潜水艦の「検討」を盛り込む案で、政府の発表は7日午前の時点でありません。小泉防衛相も7月14日の国会で、「決め打ちしているわけでも、決定しているわけでもありません」と答えています。
[政治] この記事の要点
2026年10月7日 発表
- 「自衛隊に原潜導入」と見て、決まったのかを知りたい人
- 安保3文書の改定のゆくえを追っている人
報じられた中身
共同通信は10月6日21時、読売新聞は7日朝、国家安全保障戦略など安保3文書を年内に改定するにあたり、原子力潜水艦に言及する案が政権内で浮上していると報じました。どちらも複数の関係者の話として伝えたもので、政府の公式発表は、7日午前の時点で確認できません。
| 報道 | 配信 | 伝えた内容 |
|---|---|---|
| 共同通信 | 10月6日21時 | 保有を前提とするような表現とはせず、研究や議論の足掛かりにする記述にとどまる可能性がある。自民党内には慎重論が根強い |
| 読売新聞 | 10月7日朝 | 保有検討が記載されれば、調査研究に着手する環境が整う。そのうえで数年間かけて保有の是非を決める想定 |
同じ案でも、2社の伝え方には温度差があります。共同は「足掛かり」にとどまる可能性を、読売は検討に着手する環境が整うことを軸に書いています。いずれも案の段階で、閣議決定された文書ではありません。
政府が国会で答えてきたこと
政府は、この1年の会見・国会答弁・答弁書で、原潜の保有を「決め打ちしていない」と答えてきました。日付順に並べます。
| 日付 | 場 | 要点 |
|---|---|---|
| 2025年9月19日 | 防衛省の有識者会議の報告書 | 長距離・長期間の潜航ができるよう、「次世代の動力を活用することの検討も含め、必要な研究を進め」ることを提言。該当の段落に「原子力」の語は出てきません |
| 2025年10月20日 | 自民党と日本維新の会の連立合意 | 次世代の動力を活用したVLS(垂直ミサイル発射装置)搭載の潜水艦の保有に係る政策を推進する内容。国会での引用と報道による確認で、合意書の原文は確認できていません |
| 2025年12月26日 | 答弁書(高市首相) | 1965年の政府見解に「変更はない」。次世代の動力は、政府として決定していることはなく、特定の動力を念頭に具体的な検討を行っているものではない |
| 2026年4月7日 | 参議院予算委員会(小泉防衛相) | 次世代の動力の選択肢の一つが原子力であることを認めたうえで、「決め打ちしているわけではなくて」、最初から原潜を議論から排除はしないと答弁 |
| 2026年7月14日 | 衆議院安全保障委員会(小泉防衛相) | 「原潜の保有というものを決め打ちしているわけでも、決定しているわけでもありません」 |
| 2026年9月11日 | 防衛相の記者会見 | 原子力潜水艦も選択肢として排除せず検討する。「決め打ちはしていません」 |
動力については、2025年12月の答弁書が特定の動力を念頭に置いていないとしたあと、2026年4月に防衛相が、選択肢の一つは原子力だと答弁しています。7月14日には「現時点で次世代の動力について決まっているものはありません」とも答えました。
決まっていないこと
| 項目 | わかっていること | まだわからないこと |
|---|---|---|
| 保有するか | 防衛相は7月14日に「決定しているわけでも」ないと答弁。読売は数年かけて是非を決める想定と報道 | 案が3文書にどう書かれるか |
| 動力 | 7月14日時点で、次世代の動力について決まっているものはない | 原子力に決めるのか、ほかの動力か |
| 費用 | 防衛相が4月7日に比較を示した(最後の節) | 日本が造る場合の見積もり。公式の資料は見つからなかった |
| 人員 | 政府の有識者会議(第2回・6月8日)の議事要旨に、人口減少の中で人員を長期的・安定的に確保できるか不透明、という発言が載っている | 乗組員の数と、育てるのにかかる年数 |
| 母港・地上施設 | ― | 公式の資料は見つからなかった |
この議事要旨には、導入を求める発言も、慎重な発言も載っています。発言は委員個人のもので、会議の結論ではありません。
原子力基本法と1965年の見解
原子力基本法の第2条1項は、原子力利用を「平和の目的に限り」行うと定めています。2012年の改正で、2項に「我が国の安全保障に資する」という目的が加わりました。政府は同年7月10日の答弁書で、この改正は、原子力の研究・開発・利用は平和の目的に限るという方針に何ら影響を及ぼすものではない、と答えています。
政府の解釈の土台は、1965年4月14日の国会答弁です。当時の科学技術庁長官は、原子力が自衛艦の推進力として使用されることも、船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状においては認められない、と答えました。2025年12月26日の答弁書は、この見解に「変更はない」としています。
答弁書は、小泉防衛相が2025年12月16日に、「一般化した状況」に当たり得る一例として商船がすべて原子力に置き換わる場合を挙げたことにも触れ、こうした政府答弁は現在も踏襲していると説明しています。2024年9月5日の林官房長官(当時)の会見での発言も、1965年の答弁と同趣旨を述べたものだと説明しています。
3文書に「検討」が入ることと、この解釈が変わることは別の話です。解釈が変わったとする政府の資料は、確認できませんでした。

防衛相が示した費用の比較
費用は、小泉防衛相が4月7日の参議院予算委員会で数字を挙げています。海上自衛隊の「たいげい」型潜水艦の建造費は、令和7年度予算で約1,140億円です。米国のバージニア級(原子力潜水艦)の調達費用は、2025年6月の米議会調査局の報告書で約42.8億ドルで、1ドル150円で計算すると6,422億円とされています。
6,422億円を1,140億円で割ると約5.6倍です。この割り算は当サイトの計算で、艦の種類も年度も違うので、目安にとどまります。防衛相自身も、メンテナンスや運用の論点は、原子力に限らずどの動力にもあると述べています。
| 区分 | 防衛相が一般論として挙げた原子力潜水艦の特徴 |
|---|---|
| 長所 | 長時間の潜航や長期間の行動が可能。通常動力艦の数倍の速力を持つとされる(9月11日の会見) |
| 短所 | 水中での静粛性が劣るとされる。原子力機関そのものが高価格。船体の大型化が必要。維持・整備や運用に特殊な専門技術が必要 |
防衛相はこれらを「あくまで一般論」として述べています。保有国や導入を計画している国は原潜 導入 計画 国/保有国と計画中の国の一覧にまとめました。
生活・仕事にどう効くか
- ニュースの読み方:報じられたのは未発表の案で、共同と読売で書きぶりに温度差がある。防衛相は国会で、保有を決め打ちも決定もしていないと答えている。
- 費用の目安:防衛相が4月7日に示した比較では、たいげい型が約1,140億円、米バージニア級が約6,422億円(1ドル150円換算)。割ると約5.6倍だが、艦の種類も年度も違う。
結局どうすればよいか
- 続報は、防衛省・首相官邸の公表で確かめる。安保3文書の改定は年内の予定
- 「決定」か「検討」かは、閣議決定された文書の文言で判断する。報道段階の案は変わりうる
- 保有国や導入を計画している国の一覧は、別の記事にまとめている
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
公式出典
- 防衛省「防衛大臣記者会見」(令和8年9月11日)(2026年9月11日発表)
- 国会会議録 衆議院 安全保障委員会(小泉防衛大臣の答弁)(2026年7月14日発表)
- 国会会議録 参議院 予算委員会(次世代の動力の選択肢)(2026年4月7日発表)
- 国会会議録 参議院 予算委員会(建造費の比較)(2026年4月7日発表)
- 参議院 答弁書 内閣参質二一九第七九号(辻元清美議員の質問)(2025年12月26日発表)
- 参議院 答弁書 内閣参質一八〇第一七一号(加藤修一議員の質問)(2012年7月10日発表)
- 防衛力の抜本的強化に関する有識者会議 報告書(2025年9月19日発表)
- 首相官邸「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」第2回 議事要旨(2026年6月8日発表)
- e-Gov法令検索「原子力基本法」
更新履歴
- 2026年10月7日 初版を公開(共同通信10月6日・読売新聞10月7日の報道と、国会答弁・答弁書の原文にもとづく)
※本記事は2026年10月7日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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