🗨️「東京23区で、徒歩10分以内に駅がない地域はどこですか?」
話題の地図で赤く塗られたのは、練馬区・杉並区・世田谷区など西側と、足立区・葛飾区・江戸川区など東側です。ただし赤は「駅まで10分以上かかる」という意味ではありません。分速80メートルで道路をたどった計算で、駅構内の通り抜けや地下道は入っていないためです。
[不動産] この記事の要点
2026年8月25日 発表 (2026年9月10日 更新)
- 東京23区で借りる家・買う家を探している人
- 「駅徒歩10分」を条件にして物件を絞っている人
- 今住んでいる場所が赤く塗られていて気になった人
徒歩10分圏に駅がない地域だけを赤く塗った地図が、527万回表示された
統計データを地図にするサービス「47maps(フォーティセブンマップス)」の公式アカウントが、2026年8月25日にXへ2枚の地図を投稿しました。運営は株式会社日本統計センター(北九州市)です。
1枚目が徒歩10分版、2枚目が徒歩15分版。赤く塗られているのは、その時間内に鉄道駅へたどり着けない地域です。ねとらぼが記事にした9月9日の時点で、投稿は527万回以上表示され、1万9000件を超える「いいね」が付いています。
東京23区で徒歩10分圏に駅がない地域を可視化しました pic.twitter.com/ejeZxwtJtR
— 47maps @㈱日本統計センター (@47maps) 2026年8月25日
山手線の内側はほぼ白、赤が目立つのは練馬・世田谷・足立・葛飾・江戸川
徒歩10分版を見ると、新宿区・文京区・千代田区といった山手線の内側は白い部分が目立ちます。中央線や埼京線が伸びる方向にも、白い帯が郊外へ延びています。
赤が増えるのは、そこから外側です。西側では練馬区・杉並区・世田谷区、東側では足立区・葛飾区・江戸川区へ、放射状に広がっていきます。
| 地域 | 徒歩10分版での見え方 |
|---|---|
| 新宿区・文京区・千代田区など山手線の内側 | 白い部分が大半。駅が密に並んでいる |
| 中央線・埼京線などの沿線 | 線路に沿って白い帯が郊外へ延びる |
| 練馬区・杉並区・世田谷区(西側) | 赤がまとまって残る |
| 足立区・葛飾区・江戸川区(東側) | 赤がまとまって残る |
| 皇居・代々木公園・赤坂御所・新宿御苑 | 広い緑地そのものが赤くなる |
「東京23区ならどこでも駅が近い」というイメージとは、少しずれた絵になります。23区の面積は約619平方キロメートル。そのなかに、徒歩10分では駅に届かない場所がまとまって残っているという見え方です。
徒歩15分に広げると、赤は皇居や大きな緑地くらいしか残らない
2枚目の徒歩15分版では、赤い部分が大きく減ります。ITmedia NEWS(アイティメディアニュース)は、皇居や代々木公園、赤坂御所、新宿御苑といった広い緑地を除けば、都心からほとんど赤が消えると書いています。
それでも残るのは、練馬区や世田谷区の外側の縁、そして江戸川区の川沿いです。10分と15分、たった5分の差で地図の印象がここまで変わるところが、この2枚を並べた投稿がここまで伸びた理由だと私は見ています。
5分違うだけで、そんなに変わるものですか?
分速80メートルで計算しているので、5分は400メートルです。駅と駅の間隔が1キロ前後の場所だと、この400メートルで隣の駅の圏内に入ってしまいます。
国の地価公示で数え直しても、23区の21%は駅から800メートル超だった
地図がどこまで実態を映しているのかを、別のデータで確かめました。使ったのは国土交通省の国土数値情報にある地価公示データ(L01-23・令和5年公示)です。1地点ごとに「最寄り駅からの距離」が入っているので、東京23区の全地点を数えました。
結果は1,594地点のうち334地点、21.0%が駅から800メートルを超えていました。徒歩10分は道路距離800メートルにあたるので、話題の地図が赤く塗った範囲とおおむね同じ話になります。
区ごとの差は、地図の見た目と重なります。もっとも高いのは江戸川区で61.5%(91地点中56地点)。足立区45.5%、葛飾区45.3%、練馬区38.2%、世田谷区30.1%と続きます。逆に千代田区と文京区は、全地点が駅から800メートル以内でした。
Xの反応は「散歩したい」と「住所が絞られる」に割れた
投稿には、地図の見方をめぐって違う方向の反応が並びました。以下はTogetter(トゥギャッター)のまとめに収録された、実在の投稿からの引用です。
| 投稿の趣旨 | 本文 |
|---|---|
| 歩いてみたくなった | 「この赤い地域、散歩してみると面白いところばかりです」 |
| 住む場所が絞り込める | 「徒歩15分に駅がないっていうと思いっきり住所絞られる」 |
| 家賃が下がる話として | 「駅から歩いて10分以上かかる所は家賃がぐんと下がる」 |
| 実感とのズレ | 「地図的には10分で行けるらしい」 |
報道では、算出方法そのものへの指摘も多かったと伝えられています。私鉄や地下鉄の駅が反映されていないのではないか、駅がある場所なのに赤く塗られている、といった内容です。この指摘は、次の見出しでそのまま答えになります。
この地図の赤は「駅まで10分以上かかる」という意味ではない
ここがいちばん読み違えやすいところです。この地図は、駅を中心に半径800メートルの円を描いたものではありません。ITmedia NEWSが伝えた日本統計センターの説明によると、計算の条件はこうなっています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 歩く速さ | 分速80メートル(10分=800メートル、15分=1,200メートル) |
| たどる道 | 自動車や自転車などが通行できる一般道路のみ |
| 計算に入らないもの | 駅構内の通り抜け、地下道。道路のデータが無い場所 |
| 駅の位置 | 乗り入れ路線をまとめて1点に設定 |
つまり赤は「その地点から道路をたどって駅へ行くと800メートルを超える」という意味で、実際に歩いた時間の記録ではありません。
分かりやすい例として報じられたのが荻窪(おぎくぼ)駅です。徒歩10分版では、荻窪駅の北側が駅のすぐそばでも大部分が赤く染まっていました。駅の座標が南口側の1点に置かれていたため、北側の地点は「南口まで回り込む距離」で計算されたからです。

不動産広告の「徒歩10分」も、実際に歩いて計った時間ではない
では、物件広告に書いてある「駅徒歩10分」は実測なのか。こちらも実測ではありません。根拠は、不動産の表示に関する公正競争規約施行規則の第9条です。原本の条文を引きます。
徒歩による所要時間は、道路距離 80 メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。この場合において、1分未満の端数が生じたときは、1分として算出すること。
不動産の表示に関する公正競争規約施行規則 第9条第9号
道路距離を80で割って、端数は切り上げる。それだけです。表の形にすると次のようになります。
| 広告の表示 | 道路距離 |
|---|---|
| 徒歩1分 | 80メートルまで |
| 徒歩5分 | 320メートル超〜400メートル |
| 徒歩10分 | 720メートル超〜800メートル |
| 徒歩15分 | 1,120メートル超〜1,200メートル |
| 徒歩20分 | 1,520メートル超〜1,600メートル |
どこからどこまでを測るのかも、同じ条文(第9条第7号)に決められています。ここが2022年9月の改正で書き足された部分で、47mapsの地図との違いがはっきり出ます。
| 測る場所 | 規則の定め |
|---|---|
| 物件側の起点 | 物件の区画のうち駅にもっとも近い地点。マンションとアパートは建物の出入口 |
| 駅側の着点 | その施設の出入口。ただし施設の利用時間内に常時利用できるものに限る |
| 団地の場合(第8号) | もっとも近い区画からの数値とともに、もっとも遠い区画からの数値も表示する |
つまり広告の分数は、駅の中心ではなく「常時使える出入口」までを測っています。夜間に閉まる出口や、時間帯で使えなくなる地下通路は着点にできません。話題の地図が駅を1点にまとめたのとは、そもそも測り方が違います。
団地やマンションの分譲では、いちばん近い棟だけでなく、いちばん遠い棟からの分数も並べる決まりです。パンフレットに「徒歩8分〜13分」と幅で書いてあるのは、この規則によるものです。
信号待ちや坂道は、分数に入っているのですか?
入っていません。施行規則の第9条を最後まで読みましたが、信号・坂・階段・歩道橋を加算するという定めはありません。加算されるのは道路距離だけです。
私はこの規則を、売り手のためではなく比較のためのものさしだと考えています。全社が同じ計算式を使うから、A社の「徒歩8分」とB社の「徒歩12分」を並べて比べられる。逆に言えば、ものさしの数字と、自分の足で感じる時間が一致しなくても規則違反ではありません。だから、数字の意味を知ったうえで自分で歩く必要が出てきます。

駅から遠い地域が住みにくい地域とは限らない
赤く塗られた地域を「不便な場所」と読むかどうかは、住む人の生活によって変わります。
| 駅から遠いことが効く場面 | 内容 |
|---|---|
| 向いている | 通り抜けの車が少なく、住宅街が静かになりやすい |
| 向いている | 同じ広さでも家賃・価格が抑えられる場合がある |
| 向いている | 土地に余裕があり、駐車場付きや広い間取りを選びやすい |
| 向かない | 毎日の通勤・通学で往復の徒歩時間がそのまま増える |
| 向かない | 雨の日、荷物が多い日、体調の悪い日にこたえる |
| 向かない | 車を手放したあと、年齢を重ねてからの移動手段が細くなる |
価格の話は、当サイトで全国141市区町村の実際の取引データを使って計算したことがあります。駅から1分遠くなると土地はいくら安くなるのかを調べたところ、38%の街では駅からの距離で差が出ませんでした。「駅から遠いほど必ず安い」は、全国どこでも成り立つ話ではありません。
もうひとつ、駅からの距離とセットで効いてくるのが前面道路の幅です。同じ「駅から遠い」でも、道幅4メートル未満の土地は駅から遠い地域ほど3割安くなっていました。赤い地域のなかでも、条件は一様ではありません。
引っ越し前に、駅から物件まで一度歩いてみる
地図と広告の数字は、どちらも道路の長さから作られています。足りないのは、そこを歩く時間帯と、歩く人の体です。
契約する前に、駅の改札から物件の玄関まで一度歩いてみてください。おすすめは、ふだんその道を使う時間帯です。朝の通勤時間帯と、帰宅する夜の2回歩けば、昼間の下見では見えないものが出てきます。
駅から歩くときに見るもの
- ✓ 駅のどの出口が最短か。改札から出口までにかかる時間も足す
- ✓ 踏切、大きな道路の信号、歩道橋、階段。待たされる場所がいくつあるか
- ✓ 坂の向き。行きが下りなら、帰りは毎日その坂を上ることになる
- ✓ スーパー・病院・学校・バス停が、その道の途中にあるか
- ✓ 夜の街灯と人通り。子どもや自分が1人で歩ける明るさか
学校までの道は、駅までの道とは別に確かめる必要があります。通学路は駅と反対方向にあることが多いためです。
地図が赤いか白いかは、その土地の道路のつながり方を映したものです。住みやすいかどうかを決めるのは、そこを歩く自分の生活のほうだと私は考えています。
生活・仕事にどう効くか
- 場所選び:23区でも徒歩10分圏外はまとまった面積で残ります。練馬・杉並・世田谷など西側と、足立・葛飾・江戸川など東側に集中しています。
- 地図の読み方:赤は道路をたどった計算の結果です。駅構内の通り抜けや地下道は数えられていないため、駅のすぐ近くでも赤くなる場所があります。
- 物件選び:広告の「徒歩10分」も道路距離800メートルを機械的に割った数字です。信号待ちや坂道は加算されません。
結局どうすればよいか
- 地図の赤は「そこから駅へ道路をたどると800メートルを超える」という意味に読み替える
- 気になる物件は、駅のどの出口が起点になっているかを確かめる
- 契約する前に、朝の通勤時間帯と夜の2回、駅から物件まで歩いてみる
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
ほかに使える無料ツール
公式出典
- 47maps @㈱日本統計センター(@47maps)のポスト(2026年8月25日発表)
- ITmedia NEWS「東京23区で『徒歩10分以内』に駅がない地域はどこ? 駅空白地帯マップが話題」(2026年8月25日発表)
- ねとらぼ「東京23区の地図→『徒歩10分圏内に駅がない地域』だけ塗ると…… 興味深い結果が527万表示」(2026年9月9日発表)
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」規約集PDF(施行規則 第9条第7号〜第9号)(2026年9月10日発表)
- 国土交通省 国土数値情報 地価公示データ(L01-23・令和5年公示。東京23区1,594地点を筆者が集計)(2026年9月10日発表)
更新履歴
- 2026年9月10日 初版を公開
※本記事は2026年9月10日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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