相続した実家が再建築不可だと分かると、たいてい最初に「二束三文にしかならない」と言われます。国が公開している取引記録257,639件を数えたところ、前面道路が4m未満の家はたしかに33.3%安く売れていました。ところが同じ築年どうしで並べ直すと、差は8.1%まで縮みます。
安く見えている正体の大半は、道ではなく建物の古さでした。ただし2025年4月から、2階建ての家は屋根を全部葺き替えるだけでも役所の建築確認が必要になっています。売る売らないより先に、この一点を確かめてください。
この記事でわかること
- ✓ 前面道路が4m未満の家は、実際にいくら安く売れているか
- ✓ 2025年4月から何が変わり、何は変わっていないか
- ✓ 平屋と2階建てで進む道が分かれる理由
- ✓ 慌てて手放す必要があるかどうか
「二束三文」は、同じ築年で比べると8%でした
国土交通省が四半期ごとに公開している不動産取引価格情報から、住宅地の「土地と建物」の取引を全国分集めました。敷地50〜400㎡、価格100万円〜3億円にしぼって257,639件。このうち前面道路の幅員が4m未満だったのは24,134件で、全体の9.4%にあたります。
同じ市区町村の中で、4m未満の家と4m以上の家の㎡単価の中央値をくらべます。両方に15件以上の取引がある414市区町村で計算したところ、4m未満の家は中央値で33.3%安く売れていました。安い側になったのは376市区町村、全体の90.8%です。
ここまでは、よく聞く話のとおりです。問題はこの先でした。

築1990年以降に建った家だけにそろえると、4m未満の家は8.1%安いところまで縮みました。築2000年以降でそろえると5.6%です。安い側になった市区町村の割合も、90.8%から70.5%、60.6%へと下がっていきます。
読者
同じ道の狭さなのに、どうして差が変わるんですか?
くらべている家が違うからです。狭い道に面した家は、そもそも古い家が多いんです。
安さの正体は、道ではなく13年ぶんの古さ
築年数の中央値を出すと、はっきりします。前面道路が4m未満の家は34年、4m以上の家は21年でした。同じ町の中で、13年ぶん古い家どうしを新しい家とくらべていたことになります。
道が狭い場所は、区画整理が入る前からの古い市街地です。だから建て替えが進まず、築40年、50年の家が残ります。値段が安いのは、道のせいというより、そこに残っている家の年齢のせいでした。

念のため逆も見ておきます。神戸市では全件だと4m未満の家が26.7%安いのですが、築1990年以降にそろえると逆に19.9%高くなりました。狭い道に建つ新しめの家は、三宮に近い密集した町に集まっているからです。全国でも、築30年未満に限ると4m未満の家のほうが高く売れています。
つまり幅員だけで値段は決まりません。この記事の数字は「前面道路が狭い家」の値段であって、「再建築不可の家」の値段そのものではありません。
2025年4月から、屋根の全面葺き替えに建築確認が要ります
ここからが、いま動いている話です。2022年に公布された法律の改正で、建築確認の対象が2025年4月1日に広がりました。国土交通省の周知チラシは、こう書いています。
二階建ての木造戸建等で行われる大規模なリフォームで、2025年4月以降に工事に着手するものは、事前に建築確認手続きが必要となります。
ここでいう「大規模なリフォーム」は、水回りの入れ替えのことではありません。建築基準法が定める大規模の修繕・模様替、つまり主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根または階段)の一種以上について行う過半の改修を指します。
国土交通省が挙げている線引きは次のとおりです。
| 工事の中身 | 建築確認 |
|---|---|
| 階段の架け替え | 必要 |
| 屋根の全面的な改修 | 必要 |
| 屋根や壁の仕上げ材だけの改修 | 不要 |
| キッチン・トイレ・浴室などの水回り | 不要 |
| 手すり・スロープの設置 | 不要 |
申請せずに工事を始めた場合、建築基準法99条で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています。対象は工事をした業者だけでなく、建築主本人も含まれます。
再建築不可の家では、その建築確認に役所の判断がひとつ増えます
古い家は、いまの法律に合っていないところを抱えたまま建っています。法律ができる前から建っていたものは、そのままでよいことになっているからです。ただし大規模の修繕をするときは、その扱いがどこまで続くのかが条文で決められています。
建築基準法施行令137条の12は、条文ごとにその範囲を書き分けています。防火や日陰の規定については「全ての大規模の修繕又は大規模の模様替」と書かれていて、自動的にそのまま認められます。ところが接道義務を定めた43条1項だけは、第11項でこう書かれています。
当該建築物の用途の変更…を伴わない大規模の修繕又は大規模の模様替であつて、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの
「特定行政庁が認めるもの」。ここが他の条文と違います。自動ではなく、役所が一件ずつ判断します。
読者
去年まではそんな話、聞きませんでしたよね?
木造2階建ては大規模の修繕でも建築確認が要らなかったので、この関門にたどり着く人がいなかったんです。
2025年3月までは、木造2階建ての住宅はいわゆる4号建築物で、大規模の修繕・模様替に建築確認が必要ありませんでした。条文はずっとあったのに、実務で表に出る場面がなかったのです。2025年4月から、はじめて正面から当たるようになりました。
分かれ目は「2階建てかどうか」
すべての家が対象になったわけではありません。改正後の建築基準法6条1項を読むと、大規模の修繕・模様替が建築確認の対象になるのは1号と2号の建築物だけで、3号は入っていません。
- 2号 … 2階以上、または延べ面積200㎡超(木造2階建ての住宅はここ)
- 3号 … 都市計画区域内などの、平屋かつ延べ面積200㎡以下
つまり平屋で200㎡以下なら、いまも大規模なリフォームに建築確認は要りません。同じ再建築不可でも、平屋と2階建てで進める道がはっきり分かれます。実家がどちらなのかを、まず登記や図面で確かめてください。
延べ面積100㎡を超える家の大規模なリフォームは、建築士による設計・工事監理も必要になります。
このエリアの相場はいくらですか?
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前面道路が4m未満でも、再建築不可とは限りません
ここを混ぜてしまうと判断を間違えます。幅員が4mない道に面していても、建て替えできる家はたくさんあります。
建築基準法42条2項は、その区域に法律が適用されたときすでに家が立ち並んでいた幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したものを道路とみなすと定めています。道の中心線から2m下がった線が敷地の境界とみなされるので、その分だけ後退すれば建て替えができます。いわゆるセットバックです。
建て替えができないのは、道路に2m以上接していないか、接している道がそもそも建築基準法の道路ではない場合です。43条2項には、幅員4m以上の道に接していて利用者が少ない建物、敷地の周囲に広い空地がある建物について、特定行政庁が認めれば例外を認める道も用意されています。
法改正から1年、値段はまだ動いていません
「法改正でこれから値下がりします」と言われたら、この数字を思い出してください。改正の前後で、価格差がどう動いたかを数えました。
| 期間 | 築30年以上の家 |
|---|---|
| 2023年1〜3月期〜2025年1〜3月期(改正前) | 4m未満は18.1%安い |
| 2025年4〜6月期〜2026年1〜3月期(改正後) | 4m未満は19.4%安い |
1.3ポイントしか動いていません。制度が変わっても、市場の値付けはまだ反応していないということです。
私は、この改正でいちばん影響を受けるのは売る人ではなく、直して住み続けようとしていた人だと見ています。売却額は1年たっても動いていない一方で、屋根や階段に手を入れる工事は、役所の判断をひとつ挟むことになったからです。実家を残す前提で計画していた人ほど、段取りを組み直す必要が出てきます。

再建築不可の実家を売るときに、先に調べる4つ
読者
結局、何から手をつければいいんでしょう。
順番があります。値段を聞きに行くのは、いちばん最後で大丈夫です。
- 平屋か2階建てか。平屋で200㎡以下なら、大規模なリフォームでも建築確認は要りません。残して直す道が生きています
- 前面の道が2項道路かどうか。市区町村の建築指導課の窓口で確認できます。2項道路ならセットバックして建て替えられるので、そもそも再建築不可ではありません
- 築年。この記事の数字のとおり、同じ築年でくらべた差は8.1%です。査定額が近隣の相場から大きく離れているなら、その理由を道のせいにされていないか聞いてください
- 近隣の実際の成約価格。国が公開している取引価格を先に見ておくと、提示された金額が妥当かどうかを自分で判断できます
買取業者に「再建築不可なので」と一言で説明されたときは、それが道の話なのか、築年の話なのか、リフォームの手続きの話なのかを分けて聞き直してください。3つは別のことで、値段に効く大きさもそれぞれ違います。
この記事は2026年8月時点の制度で書いています。実際の可否は敷地ごとに変わるので、工事や売却を決める前に市区町村の建築指導課で確かめてください。
出典
- 国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」
- 国土交通省 周知チラシ「4号特例」見直し(2025年3月版・PDF)
- 建築基準法 6条・43条・42条2項・2条14号・99条、建築基準法施行令137条の12(e-Gov法令検索)
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ 不動産取引価格情報。2023年1〜3月期〜2026年1〜3月期に公表された住宅地の「宅地(土地と建物)」のうち、敷地50〜400㎡・価格100万円〜3億円の257,639件を当サイトで集計しました。市区町村内の比較は、前面道路4m未満と4m以上の取引がそれぞれ15件以上ある市区町村に限っています。同じ市区町村どうしの比較でも駅からの距離や町の違いは残るため、幅員だけの影響ではありません。2026年1〜3月期は公表の途中です


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