🗨️「下呂は昼前には雨がやんでいたのに、どうして飛騨川だけ急に危なくなったんですか?」
上流で降った雨が遅れて到着したからです。上呂(じょうろ)観測所は9日9時の時点では基準水位以下でしたが、1時間半後の10時20分には氾濫の目安とされる高さを超えました。その間、地元の萩原で降っていた雨は1時間0.5ミリです。上流の高山では朝5時台に25.5ミリ降っています。
[災害] この記事の要点
2026年9月9日 発表
- 下呂市萩原町・小坂町など飛騨川沿いに住んでいる人
- 飛騨川の下流にあたる白川町・七宗町・美濃加茂市の人
- 9日に高山本線・国道41号で飛騨方面へ向かう予定の人
9時に基準以下だった川が、1時間半で氾濫の高さを超えた
飛騨川の洪水予報で基準になっているのは、下呂市萩原町にある上呂(じょうろ)観測所です。9日の10分ごとの記録を、到達した基準水位の名前で並べるとこうなります。
| 時刻 | 到達区分 | 直前10分の変化 |
|---|---|---|
| 9:00 | 基準水位以下 | +0.12m |
| 9:20 | 水防団待機水位 | +0.36m |
| 9:40 | 氾濫注意水位 | +0.37m |
| 10:00 | 氾濫危険水位 | +0.60m |
| 10:20 | 氾濫(最上位の区分) | +0.23m |
| 10:30 | この日の最高 | +0.04m |
| 11:40 | 避難判断水位 | −0.14m |
| 11:50 | 氾濫注意水位 | −0.17m |
| 12:40 | 氾濫注意水位 | −0.05m |
上がりきるまで1時間半、いちばん速いところで10分間に0.60メートル。10時30分の最高水位は、氾濫の目安とされる高さを15センチ上回っていました。
住まいのリスクに対する備え
土地の履歴やリスクを知ったら、次は「起きたときにどうするか」です。最低限そろえておくと動けるものを挙げます。
一から集めると抜けが出ます。まずセットで用意して、家族の人数分と常備薬だけ足すのが早いです。
断水で最初に困るのがトイレです。備蓄で見落とされやすい一方、代用が効きません。
停電時は懐中電灯より、部屋全体を照らせるランタンの方が使えます。電池でも充電でも点くものだと、どちらが尽きても止まりません。
鍵につけて持ち歩けるサイズ。停電や夜道、内見での床下確認にも使えます。備えは「持ち歩けるかどうか」で使用率が変わります。
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警報が出た10時25分には、水位はもう超えていた
気象庁と岐阜県下呂土木事務所がレベル4の氾濫危険警報を出したのは10時25分です。上の表を見ると、その5分前の10時20分には到達区分が最上位に切り替わっています。
警報が出てから動けばいいと思っていました。
川の水位のほうが先に動きます。警報は水位を見てから発表の手続きを踏むので、どうしても後ろになります。警報は「動き始める合図」ではなく「もう始まっている」という知らせだと考えたほうが実態に合います。同じことは9月8日夜の東京の野川でも起きていて、水位が危険水位を超えたのが21時00分、レベル4の発表は21時10分でした。
雨がやんでから上がった。上流の高山では朝5時に25.5ミリ
ここが今回いちばん分かりにくいところです。上呂が跳ね上がった9時50分から10時30分にかけて、すぐそばの萩原アメダスで降っていた雨は1時間あたり0.5ミリでした。地元ではもう小降りになっていた時間帯です。
ではどこの雨だったのか。飛騨川の上流にあたる観測所の、9日の1時間雨量を並べます。
| 観測所 | 9日の1時間最大 | その時刻 |
|---|---|---|
| 高山(高山市・上流) | 25.5ミリ | 5時台 |
| 宮之前(下呂市・上流側) | 22.0ミリ | 7時台 |
| 萩原(上呂観測所のそば) | 11.5ミリ | 9時台 |
並べると、雨の山が上流から下流へ順に降りてきているのが分かります。高山の5時台の雨が、上呂の水位のピーク(10時30分)として現れるまでに約5時間。窓の外を見て「やんだから大丈夫」と判断した人が、いちばん危ないタイミングに家にいることになります。
同じ下呂市でも、上がった観測所は1つだけ
下呂市内には水位の観測所が9か所あります。今回レベル4の対象になったのは上呂だけで、国が管理する中呂・下呂・金山の3か所は、12時40分の時点でいずれも基準水位以下でした。
「下呂市が危険」ではなく「上呂周辺が危険」だった、というのが観測値から読み取れることです。市の名前でニュースを見ていると、この差が消えてしまいます。飛騨川は山あいを流れる川で、支流が合わさる場所ごとに上がり方が変わります。
自分の家に近い観測所って、どうやって知るんですか。
国土交通省の「川の防災情報」で地図から選べます。大雨の日に探すのではなく、晴れている日に1つ決めてブックマークしておくのが実務的です。市町村単位の警報より、その1か所の10分値のほうがずっと早く動きます。
この住所は浸水しやすい場所ですか?
住所を入れるだけ。ハザードマップの指定(浸水・土砂・津波)と地盤の強さが5秒で出ます。会員登録も電話番号も要りません。
萩原には、水を鎮めるための塔が流された記録が残っている
国土地理院がまとめている自然災害伝承碑に、下呂市萩原町萩原の「水除経王塔(みずよけきょうおうとう)」が登録されています。碑の建立は1819年(文政2年)。氾濫を繰り返す飛騨川を鎮めるため、住民が小石に一文字ずつ経文を書いて堤防に納め、その上に石塔を建てたものです。
その塔自体が、1958年(昭和33年)7月の豪雨で流されています。このとき萩原では橋が3つ流失し、家屋の全壊・流失10戸、床上浸水99戸という被害が出ています。石塔は後日見つかって再建され、1962年に現在地へ移されました。2019年には地域の人が新しい経石を納め、本来の姿に戻っています。
今回水位が上がった上呂は、この萩原町の中にあります。200年前から、ここは氾濫する川として扱われてきた場所だということです。碑は登録された地点の座標まで公開されているので、住所から場所を確かめられます。
いま飛騨川沿いにいる人がやること
水位は下がっていますが、9日は昼過ぎから再び雨の予想が出ています。上呂は午前中に1時間半で最上位まで行きました。もう一度同じ降り方をすれば、同じ速さで上がります。
飛騨川沿いに家がある人は、避難の判断を雨音でしないことです。窓の外が静かでも、上流で降っていれば数時間後に来ます。自分の家が洪水の浸水想定区域に入っているかどうかは、住所を入れれば確認できます。
生活・仕事にどう効くか
- 上がる速さ:上呂観測所は9時に基準水位以下、9時20分に水防団待機、9時40分に氾濫注意、10時に氾濫危険と、1時間で3段階上がった。9時50分から10時までの10分間だけで0.60メートル上昇している。
- 警報より水位が先:レベル4氾濫危険警報が出たのは10時25分。その5分前の10時20分には、川の防災情報の到達区分はすでに最上位の「氾濫」に切り替わっていた。
- 同じ市内でも違う:下呂市内でも国が管理する中呂・下呂・金山の各観測所は、12時40分時点でいずれも基準水位以下だった。市全体が同じ状況になっているわけではない。
結局どうすればよいか
- 雨がやんだことを避難をやめる理由にしない。上流の雨が届くまでに数時間かかる
- 自分の家の近くの観測所を、市町村名ではなく観測所名で1つ決めておく
- 飛騨川沿いの家は、洪水浸水想定区域に入っているかを住所で確認しておく
あわせて読む・調べる
くわしく知る(保存版の記事)
- 国道41号 通行止め 下呂と高山で閉まるのは連続雨量150ミリです
- 野川・仙川 氾濫の発生はなし 三鷹の大沢池上は氾濫まであと0.13メートルでした
- 水災等地区分の調べ方 ハザードマップと一致しない5段階のリスク区分
- ハザードマップ 色なし うちは安全ってこと? 海抜マイナス1.8メートルの住宅地も白
ほかに使える無料ツール
- 住所まるごとチェック — 住所の表記ゆれ・実在をまとめて確認する
公式出典
- 国土交通省「川の防災情報」上呂観測所(飛騨川・岐阜県下呂市萩原町)10分水位データ(2026年9月9日発表)
- 気象庁 指定河川洪水予報(木曽川水系飛騨川・岐阜地方気象台と岐阜県下呂土木事務所の共同発表。9日10時25分 レベル4氾濫危険警報)(2026年9月9日発表)
- 気象庁 アメダス(萩原・宮之前・高山の10分値および1時間値)(2026年9月9日発表)
- 国土地理院 自然災害伝承碑(21220-001 水除経王塔・岐阜県下呂市萩原町萩原。1819年建立、1958年7月24〜25日の洪水ほか)(2022年3月9日発表)
- 下呂市 災害情報(避難情報・避難所の最新はこのページで確認)(2026年9月9日発表)
更新履歴
- 2026年9月9日 初版を公開(9日12時40分時点の観測値にもとづく)
※本記事は2026年9月9日時点で公表されている情報にもとづきます。数値・制度・進路などは今後変わる可能性があるため、最新の内容は各公式発表をご確認ください。
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