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追い越した、その先で。

左に歩道のある少し狭い生活道路。前をふらつく高齢の男性が自転車で走り、対向車も来ている。右運転席の母は後ろで待つ。
両手でハンドルを握り、困り眉と落ち着かない目、小さく開いた口で、急いでるんやけど…と思う母。
前にはまだ同じ自転車。右を対向車が通り過ぎるのを待ち、抜くに抜けん…と思う母。
対向車が過ぎた後も、同じ細い道で前の自転車をゆっくり追走する。無言で待つ時間が続く。
まだ細い区間の車内から、少し先で縁石と塀が外へ引き、道幅が広がり中央線が始まる地点が見える。
道幅が広がって対向車もなくなり、ここなら…と機会を見つける。
左側の同じ車線内で、右ハンドルの車が自転車と横に並んで追い越している。母は「よし!」。
追い越した先は赤信号。車は停止線の手前で止まり、横断歩道の先は左歩道付きの細い道へ戻っている。
左サイドミラーに、同じおじいちゃんが遠く後方から車道を走ってくる姿が小さく映る。両輪は縁石の車道側。
同じ左サイドミラーの中で、おじいちゃんが少し近づいて大きく映る。歩道は左に分かれ、タイヤは車道上。
左の助手席の車窓から、同じおじいちゃんが前へ進んでいく。
赤信号で止まる車の左前に、同じおじいちゃんが片足をついて待つ。信号の先はまた追い越せない細い道。
白目で口を少し開けて固まる母。言葉も効果音もない。